ジブンミッケ

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(有)グリーンヒル九マル五

有限会社グリーンヒル九マル五


代表取締役  長谷川 和人さん


 網走湖を一望する、道道104号沿いの丘に新鮮野菜の直売所がある。グリーンヒル九マル五は、畑作三品(麦類、馬鈴薯、甜菜)を中心とする野菜を生産し、直売所を運営する有限会社だ。平成5年に発足された生産組合をその前身とするが、現在は作物の生産、直売所の運営のみにその事業をとどめない。
 自社で生産した大豆や生乳などは自社の工場に運び、豆腐やアイスクリームに加工する。それらの販売を野菜の直売と合わせて行うことで商品の付加価値を上げ、地場産の魅力を多くの人に伝えている。このような方法で農業の6次産業化を体現する集団は、オホーツク地域でもあまり例を見ない。そして、ここで取り扱う商品は多くの地元住民、観光客に喜ばれている。
 代表取締役の長谷川和人さんは、「この場所は街からかなり離れているんだけど、それでもお客さんは来てくれるんですよね。だから、何かあるんだとは思うんだけど。」と語る。その「何か」についてはあまり多くを語らなかったが、取材を通して筆者なりにも納得したことがあった。確かに、「何か」はあると。

〜新たなことに挑戦すること〜
 
 平成6年、GATTウルグアイ・ラウンド農業交渉の受け入れに代表される輸入農産物自由化の波は、長谷川さんの農業経営にも影響を与えた。当時は、組合で生産した作物を掘っ建て小屋の直売所で販売していたが、輸入品の外圧に耐えうる体力を付けるためにはそれまでの方式を見直す必要があった。平成7年には現在の直売所を建設し、事業の規模こそ拡大させたが、一方では経理や事務の仕事が追いつかなっていく。また、生産物に付加価値を付けるために、自社による加工を展開するとすれば、会社方式をとって運営することが最も効率的であるという結論に至った。平成9年、前に進もうと彼らは決断を下した。新たなチャレンジであった。
 「仮に失敗して後悔しても、何もやらないで後悔するよりはその後の為になると思う。」長谷川さんは自身の信念について、やって後悔し、やって勉強することだと言った。

〜農家がものを売る〜
 
 新鮮野菜を販売するにしても、それにはあまり農薬を使っていないのだから少し傷んでいたり中に虫が入っていたりする野菜もきっとあることだろう。もしそれを間違えて販売してしまったときどのような対応を取るべきか。また、加工した商品を販売するにしても、その価値を多くの人にアピールするにはどのような戦略を取るべきか。
 「難しいのはね、やっぱり農家がものを売るってことは一番難しいね。我々は生産することに関してはエキスパートだけど、販売となるとノウハウがなかったし、なじまない世界だと思っていた。」長谷川さんは、農家の集まりが6次産業を邁進するには少なからず難があるということを正直に語ってくれた。
 それでも今は、お客さんをがっかりさせないようにもし商品の問題が発覚しても迅速な対応を心がけているという。
 そういうことがあるからといって次から来てくれなくなるわけじゃないんだよね。だから、そこにはお客さんと私たちの間には信頼関係があるからだと、勝手に理解しているんだけど。」と、販売の難しさを語る一方で、売り手の持つべき心がまえについても語った。
 ところで、グリーンヒル九マル五が販売を含めた事業を展開することで、網走の地域に貢献する部分はかなり大きい。それは、生産者と消費者が直売所を通じて交流し、安心できる食材選びを可能にしているという点にあるだろう。そういった意味で、長谷川さんは次のようにも語った。「最初に直売所の導入を考えてきた先輩方は先見の目を持っていたんだと思う。」彼は、社会への貢献を強く意識していた。

〜オホーツク農業の魅力〜
 
 オホーツク地域の農業は帯広や十勝のそれと比較しても、引けを取らないほど盛大である。特産品や名産品と呼ばれるものも確かにある。しかし、どれをとってもアピールが不足しているのが現状だ。長谷川さんは、「もっとアピールが必要。」と今後の取り組みについてそれとなく語った。
 東京でワークショップを開いたらどうかという筆者の突っ込んだ提案に対しては、たいへん興味を示してくれた。また、運送費などのリスクを小さくすることが出来れば、日本各地の特産品とオホーツクの特産品を繋いでそれぞれの魅力を共有することが可能になると、胸を躍らせていた。
 掘っ立て小屋のときから光り続けて来た長谷川さんのチャレンジ精神は、まだ衰えない。

〜人を惹きつけるもの〜
 
 「私よりも優秀な経営者は大勢いるからね。ウェブに掲載するだなんて気が引けるから、とりあえず取材に来ていただいて、石田さんが、これは世間に出せると判断するのであれば記事にしていただいても構わないですよ。」一番初めに活動の趣旨と、取材のお願いを電話口で申し上げたときの長谷川さんの対応だった。
 筆者は年齢こそ二十歳ではあるが、実は何も知らない青二才の学生である。そのことは、電話口のつたない話し方からも十分に理解されたはずであるが、それでも彼はこちらが申し訳なくなる程の物腰の柔らかさで迎えてくれた。その柔和な話し方に触れたとき、いっぺんに緊張がときほぐれたことを覚えている。
 少なくとも筆者が思うに、あの緑の丘には人々を惹きつける「何か」が確かにある。それは、代表者のチャレンジ精神であり、経営を見つめる目であり、優しさである。そういった彼の人となりは、周りの人々に安心感を与えているし、どうしても頼りたくなってしまうような人間力を感じさせるのだ。
 お客さんが絶えないということにもこれで一つ納得がいった。

編集者 石田貴久


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